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寝間着姿の二振りが膝を突き合わせて座っている。彼らの間にあるのは小さな白い箱。箱には「零零参・極大」の表記。その箱を無言のまま、大典太と鬼丸はじっと見つめていた。
「……これは何だ」
先に大典太が口を開いたら、鬼丸は少し気まずそうに目線を逸らした。
「避妊具だ……」
鬼丸の答えに、その箱の中身が何なのか察した。男性器を薄い膜で覆う型の避妊具だろう。大人向けの万屋で目にしたことがある。
「避妊? 別に俺達は孕んだりしないだろう」
「……本来は避妊の用途だが……その、後処理が楽になると聞いたから……」
ごにょごにょと珍しく言葉を濁す辺り、鬼丸も何か気まずいと思っているのだろう。確かに最初から今まで生でやりまくってたから、改めて着けろと言われても、なんで今更と思わなくもない。
「後処理が面倒なら俺がしてやるが」
「ばっ……、そんなことしなくていい」
実際、何度か後処理を手伝ったことがある。しかし、後処理中にムラッとして、結局、最初からやり直しになることが殆どなので、鬼丸としては気が進まないと思われる。
「……外に出せばいいんじゃないのか」
「……たまに失敗するだろう」
「……まあ、な」
気持ちが高まるとどうしても、中に出したくなってしまう。仮に失敗しても、せいぜい、蕩けた顔で「下手くそ……」と言われるぐらいで、怒られたことは一度もなかった。怒らない鬼丸に甘えていた部分は確かにある。観念したように大典太はため息をついた。
「……とりあえず、着ければいいんだな」
そう言って、置かれた箱を手に取り、封を開けた。箱の中から個包装になった避妊具を取り出す。それをまじまじと見つめながら、思わず
「これ……俺のに入るのか?」
と言ってしまった。
「……大した自信だな」
避妊具の輪の大きさが明らかに自分のものよりも小さい。多少伸びたりはするだろうが、それでもきついんじゃないかと思う。
「多分、破れるぞ」
「一番大きいのにしたんだが」
「これでか……?」
「……お前の大きさがおかしいんだ」
「あんたのも大概だろう」
「おれの大きさはどうでもいい。早くそれを着けろ」
着けたら明らかに痛そうなので、気は進まないが、鬼丸の機嫌損ねてヤれなくなるのも嫌だ。寝間着の裾を割って、下着から陰茎を出すと、雑に扱いて勃たせる。十分に固くなったところで、個包装を破いて、中身を取り出した。少しぬるっとした感触。滑りが良くなるよう表面に何か塗布されているようだ。そして、改めて避妊具の輪と自身のナニの大きさを見比べてみる。……やはり、小さい。太さが圧倒的に足りない。不安が過る。
それでも着けるしかないので、裏表を確認すると、先っぽを指でつまんで塞ぎ、陰茎へゆっくりと被せた。膜を根本へ向かって下ろそうとすると、予想通り引っかかった。亀頭の一番太い部分から先へ下がらない。輪を引っ張って拡張を試みたが、気休めにしかならなかった。
「……くっ、無理だ」
「馬鹿言うな。貸してみろ」
「痛ってぇ! 爪! 当たってる!」
「お前がしっかり広げてないからだ。こうすれば入」
――プツッ。
小さな破裂音に二振りの動きがぴたりと止まる。視線を避妊具に向けると、引っ張った箇所から見事に破れていた。
「あ……」
「ほら見ろ……破れた」
「嘘だろう……。ああ、分かった。そいつは不良品だったんだ。もう一個新しいのを使えばいい」
「同じことだ。諦めろ」
諦めの悪い鬼丸を押し倒して、足首を掴み、脚を大きく開かせた。乱れた寝間着の裾から見えたのは、淡い色の陰部だった。下に何も着けていなかったようだ。
「……いやらしいな」
「ば、か……っ、あ!」
内腿を何度か軽く啄んでから、下半身に顔を埋めた。既に半勃ちになっている陰茎には触れず、滑らかな陰嚢を優しく食んだ。
「う、んンッ!」
「……あんた、本当は中に出されるの、好きだろう?」
「なっ……ち、ちがっ」
「違わない」
「っ、ん……勝手な、ことを……っ!」
抵抗が少し強まったので、陰茎を激しく吸いしゃぶって、一気に性感を高めてやった。その後、口淫と愛撫で焦らしに焦らして鬼丸を限界まで追い詰めることにより、自分の予想が違っていないことを証明できた。翌朝、口を聞いてもらえなかったが。
そして、件の避妊具はこの夜以来、一度も使われることはなく、物入れの奥底にひっそりと仕舞われている。