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最近、普通の情交に飽きてしまった二振りは、大人の万屋で「愛の賽」なるものを購入した。それは三個一組になっていて、六面ある賽の面には、身体の部位や体位などが記されている。その組み合わせでその夜のやり方を決めるというものだ。
早速、購入した夜に賽を振ってみたら、「着衣」「胸」「扱く」の目が出た。
「……要はパイズリか」
恥ずかしげもなく言う大典太に鬼丸は眉を顰めた。
「女でもないのに、できるわけないだろう」
「……できんことはないと思うが」
言うが早いか、大典太の手が鬼丸の両胸を服の上からむにゅっと鷲掴んだ。そのまま脇から筋肉を寄せて、無理矢理に谷間を作る。
「おい!」
「こうやって寄せれば……いけそうだな」
胸を下からすくい上げるように揺さぶられ、鬼丸は大典太の手を払い除けた。
「何がいけそうなんだ。一人で納得するな!」
「でもとりあえず、今夜はこれでやるんだろう」
「……お前、何か楽しそうだな」
「そうか?」
どこか上機嫌な大典太に鬼丸はむすっとする。恥ずかしいのはこっちなんだと言おうとしたら、ぶちゃあっ!という濁った音ともに胸元にひんやりとした何かが落ちてきた。
「え……」
胸元を見ると服はどろっとした透明な液体に塗れていた。微かに人工的な甘い匂いがする。大典太の手に握りつぶされている容器は、液体が入っていたものと思われる。開け口からぽたりと残滓が滴り落ちていた。
「大典太!」
「滑りをよくしないとな」
「お前な……!」
なんで今日はこんなに手際がいいんだ。そもそもその潤滑剤は、いつの間にどこから出した。鬼丸が軽く混乱しているうちに、大典太は空になった容器をその辺に放り投げた。
「ほら、横になれ」
とん、と肩を押されて、鬼丸は大典太の謎の勢いに逆らえないまま、その場に寝転がった。
「くそ……するなら、早くしろ」
「言われなくても」
声の調子から、大典太は既に相当昂っていると分かる。案の定、下衣から出された大典太のモノは反り返り、天を仰いでいた。
「……ご陽気すぎるな」
「そりゃどうも」
そう言うと、大典太は鬼丸の上半身を跨ぎ、早く、と急かすように、怒張の先で胸の頂きを突ついてきた。この野郎、後で覚えてろと心の中で毒づきながら、女に比べてなけなしの質量しかない肉を脇から寄せ上げた。さっき胸にぶっかけられた液体のせいで手が滑る。それでも、どうにか形ばかりの谷間を作ると、そこに大典太のモノがにゅるりと入り込んできた。太さだけでなく長さもそれなりにある彼のイチモツは、少し動けば顎下間近に来て、にゅるにゅると胸の上を規則的に滑る。これがいつも自分の中に入って暴れて、意識飛ばすぐらいに狂わせるのだ。憎い……憎いけど、見ていたら口の中にじわりと唾液が滲み出てきた。こくん、と唾を飲むと、不意に大典太の動きがぴたりと止まった。
「……なんか違うな」
「……何がだ」
「やっぱりこっちのほうが」
大典太の手が服の裾を掴んで、一気に胸の上まで捲りあげた。そして、剥き出しになった白い胸にぴったりと挟まれる赤黒いもの。
「こうだな」
そこで小刻みに陰茎を動かされて、直に感じる固さと熱に目眩を起こしそうになった。
「〜〜ッ!」
眼下に見える卑猥な光景から、鬼丸は無言で顔を背ける。すると、片方の乳首をきゅっと摘まれた。
「んっ!」
「……俺だけ気持ちいいのもずるいからな」
「そ、んなこと……っ、ぁあ!」
すでに固くしこっていた乳首に大典太の指がぬるぬると這わされる。ぬめりのせいでいつもより敏感に感じてしまう。弾かれるような動きを繰り返されると、背筋がぞくぞくして、下半身に熱が集まり出した。陰茎が下着の中で張り詰めて、窮屈になってくる。
「は……っ、もう、出そうだ……」
「っ、はやくないか……?」
「かなり、興奮してる……」
「変態……」
「お互い様だ……、くっ」
息を詰めた大典太が、胸の上から陰茎を離す。その先が鬼丸の顔に向けられ、あ、と思った時には熱い白濁が肌にかかった。頬や唇を濡らす精液の匂いにあてられて、鬼丸の下半身に溜まっていた熱も弾けてしまう。
「んん……ッ」
下着の中がじわりと生暖かいもので濡れていく。
なんてことだ。顔にぶっかけられて、イってしまうなんて。あまりのことに呆然としている間に、大典太は身体の上から退き、下衣を緩め、脱がそうとしていた。それに気付いた鬼丸は慌ててそれを止める。
「……どうした」
「じ、自分で脱ぐ……」
「どっちにしろ脱ぐんだろう」
ぐっ、と下衣を掴む手に力が込められる。やめろ、と言う前に、下衣は下着ごと一気に脚から引き抜かれた。精液で濡れている下腹部が晒されて、気まずさと恥ずかしさのあまり、手で股間を隠そうとしたら、それも阻止された。いやらしくべとついているそこに大典太の顔が埋められる。
「……やめ、ぁ、ひあっ!」
陰茎に纏わり付く精液を舐めとるように舌を這わされ、膝ががくがくと震えた。過敏さの残る先端もちゅくちゅくと音を立てて吸われると、さっき達したばかりなのにまた上り詰めそうになる。腰は先を求めるみたいにいやらしく揺れて、与えられる快感に正常な思考が儘ならなくなっていく。
「あ、んんっ……、あ……おれ、も……」
「……ん?」
くりゅ、と割れ目に舌先を捩じ込まれて、目の前が真っ白になった。欲熱に浮かされて、口が自分の意識が届かないところで勝手に動く。
「したい……、おまえ、の……おちんぽ、しゃぶりたい……ッ」
――直後に大典太の霊力が暴発した為、この後の記憶は二振りとも曖昧になっている。
ただ、とんでもないことをした……というのは何となく頭の隅に残っていて、たまにふと思い出して鬼丸は赤面するのだった。