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何かの捜査(適当)のためにハニトラしかけるという話になり、最初はデくんが「オレが囮になる」と申し出たものの、テさんが「駄目だ」と強めに却下し、テさんが囮としていくことに。当然デくんは納得してないし、どうにか阻止しようとしたけど無駄に終わる。
そうして、決行の日。ターゲットモブ男に呼びされた場所は、売春婦御用達の安モーテル。テさんはモブ男に指定された部屋へ入り、デくんはその隣の部屋で待機。テさんが着けてる腕時計に盗聴器しかけてるので、部屋の様子は音声のみで一応把握はできる。既にデくんは殺気立ってて、いつでも突入できる状態。
モブ男とテさんの会話を聞くに、男も中々に話術巧みで話題をうまくそらしたりしている。時間がかかるかもしれないと思っていたら、ベッドの軋む音が。そして衣擦れの音も。受信器からは「待て」「やめろ」とテさんの声が聞こえてくる。演技なのか本気で嫌がっている声色ではない。嫌がる(フリをしている)テさんを見て興奮しているのか、モブ男の荒い息遣いも聞こえてきて、デくんの血管はブチ切れる寸前になっている。握ってる銃の安全装置解除しかけたところで
「初めてなんだ」
とテさんの声が聞こえてきて、デくんの手がぴたりと止まる。ちなみに、デくんとテさんはこの間キス済ませたばかり。テさんキス上手くて、骨抜きにされたし、キスしながらあそこも軽く触られたりして、経験豊富なんだなと思っていた……のに、初めて?まさか、と動揺してたら、余計興奮したモブ男が気持ち悪い雄叫び上げたので、今度こそ安全装置解除した。忙しない衣擦れの音とリップ音が聞こえてきて、デくんの目の前真っ赤になる。今すぐにでも薄い壁に銃弾撃ち込みたいけど我慢我慢我慢。テさんが「合言葉」を言うまでは……と、銃を握り締めたまま息を潜めていると、テさんが「シャワーを……」と言ったので、デくんは即動いた。
隣の部屋の前に行くと、薄っぺらいドア板をノックする。少し間を置いて男が出てきた。浅黒い肌のヒスパニック系の男。上半身は裸。「お楽しみ」を邪魔されて不機嫌丸出しの男はスペイン語で汚いスラング吐いてきた。でも、そんなのデくんには関係ない。
「ルームサービスだ」
「あ? そんなもん頼んで」
男が顔を顰めるのと同時に眉間へ押し当てた銃の引き金を引いた。男はその場へ力なく倒れる。邪魔な男の死体を足で退かすと、早足で部屋の中へ。世辞にも綺麗とは言えないベッドの上には一糸まとわぬテさんの姿が。
「……早かったな」
「当たり前だ」
ベッドの前に立ったデくんは着ていたジャケットをばさりとテさんの肩にかけた。
「着替えて。早くここから出よう」
「……ここでシていかないのか?」
「死体の前でヤる趣味はない」
「……そうか」
そう言って薄く笑ったテさんは、肩に掛けられたジャケットをデくんに返し、ベッドから下りて、床に散らばった服を拾いはじめる。その中には卑猥なデザインの下着もあって、デくん、ちょっと下半身反応した。
「……テスカトリポカ」
「あん?」
「……その、さっき男との話で『初めて』と言ったてたが、本当なのか?」
「……本当かどうかは、オマエが確かめたらいいんじゃねぇのか?」
「……っ!」
服着ながら挑発するようなこと言われて、下半身はさらにやばいことになるけど、ふと血と微かな糞尿の臭いが鼻につき、一気に欲情は冷める。筋肉の弛緩した死体から漏れているようだ。テさんもそれに気付いて、「早く出たほうがいいな」とさっさと着替えを終わらせた。着替え終わると同時にいきなり抱き寄せられてキス。ちょっと拙いけれど濃いキスしてから、テさんの身体離すデくん。
「……何だよ。やっぱりヤりたいのか?」
「違う。あの男にキスされてただろう」
「ああ……」
ヤクと煙草と溝の臭いが混ざった最悪のキスだったが。
「嫉妬、か?」
「……そうだと言ったら?」
「……は、可愛いな、オマエ」
可愛い、と言われてちょっとムッとするも、ふっと笑ったテさんの顔があまりにもキレイだったから、益々デくん惚れなおしてしまう。
テさんの手を掴むと、男の死体はそのままに部屋から逃走。これで今回の何らかの捜査は終了。
テさんが本当に初めてかどうかは、約一ヶ月後に思わぬ形で発覚することに。
(続かない)